新著上梓

 おかげさまで2冊目の本を出版することができた。まずはお世話になった皆さまには、厚くお礼を申し上げます。

 新著『ドキュメント コンピュータ将棋』は前著『ルポ 電王戦』の続編、という位置づけではない。
 昨年末、角川新書でコンピュータ将棋の本を出してもらえることが決まった。企画の段階から、電王戦FINALそのものではなく、コンピュータ将棋が強くなるにつれてクローズアップされた様々なテーマを扱うというねらいがあった。他の多くの分野と同様に、将棋界もコンピュータによって大きな影響を受けている。盤上、盤外を問わず、コンピュータは将棋をどう変えていくのか。

 今から二十年近く前、コンピュータがプロ棋士に負ける日として、羽生名人の予言によって示された「2015年」は、実際にはどのような年なのか。現時点までの状況を記録しておきたい、という意味もあった。

 温故知新、これまでに起こったことが形を変えてまた起こるのが将棋界である。

 電王戦第1局では、敗勢に陥ったAperyが投げずに最後、王手ラッシュをした。開発者である平岡さんがあらかじめ予告しておいた通りの結末だった。コンピュータ将棋をずっと見てきた人であれば、投了しなければ最後はこうなる、ということは知っている。しかし、コンピュータ将棋にそれほど詳しくはない人たちも多く注目する、電王戦ほどの舞台では見られなかった。そうして必然的に賛否両論、大きな議論が起こった。

 第2局では永瀬六段が勝勢になった。普通に指し進めても勝ちのところ、普段では絶対に指さない角の不成を指して、Seleneの息の根を止めた。Seleneは飛角歩の不成に対応できないということを事前に発見して、それを一番注目が集まるところで、披露したわけだ。Seleneのバグ、永瀬六段の勝ち方、などなど、これらもまたいろいろな声が起こった。
 第3局ではやねうらおさんの盤外におけるパフォーマンス、稲葉七段の事前対策、入玉をめぐる攻防……などなど。

 現在進行形のトピックをあげていっても、すぐには全部書ききれないぐらいだ。

 前著を読んでいただいた方ならばおわかりの通り、前著では意識して「天才」という言葉は使わなかった。一方で今回、編集者さんの決めたサブタイトルは「天才たちが紡ぐドラマ」である。編集者さんの意図は以下の通りだ。

「松本さんは、時に理由もなくヒールを押しつけられるコンピュータ将棋の開発者に対し、彼らも人間であり、天才である、棋士同様の天才たちの人間ドラマだから、こんなに人を惹きつけるんだ、そういったことを訴えたいんじゃないかと思いまして」

 なるほど、そうなのかもしれない。筆者の技量で書ききれなかったところは多いけれど、そうした意図を汲んで読んでいたければ、幸いです。


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