幸福論

いつか雨の日に19世紀末のイギリス人の釣師の書いたものを読んでいるうちに中国古諺を一つ教えられた。出典が書いてないので、どこから引用したものか、いまだにわからないでいる。しかし、それは男による、男のための、男の諺なのである。いまこの人ごみのなかで、それがありありと昏迷のなかによみがえってくる。

一時間、幸せになりたかったら
酒を飲みなさい。

三日間、幸せになりたかったら
結婚しなさい。

八日間、幸せになりたかったら
豚を殺して食べなさい。

永遠に、幸せになりたかったら
釣りを覚えなさい。

(開高健『オーパ!』)

著者が後に調べたところでは、やはり出典はわからなかったが、中国では

「一時間、幸せになりたかったら釣りを覚えなさい」

と言い習わしていることがわかったそうだ。

私が中国古諺として十九世紀のイギリスの本で読んだときは、永遠に幸せになりたかったら釣りを覚えろ、となっていたのだが、本場では一時間幸せになりたかったら、となっているのを知って、オドロキと微苦笑。
(開高健)

実際はどうなんでしょうね。
魚釣りで味わえる幸福感が、わずか一時間ってことはないと思うのだけれど。

この日はボナンザであった。このあとつづけてさらに、ちょっと大きいの、もっと大きいの、二匹が釣れた。
(開高健『オーパ、オーパ!』)

「ボナンザ」は大当たり、釣りならば大漁、ということか。

  


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