アンチコンピュータ戦略(11)

35図は▲成田弥穂女子アマ王位-△中井広恵天河戦
(2009年5月、第3回日レスインビテーションカップ準々決勝)

難しいながらも、形勢は後手の中井天河よし。
手番が回れば先手玉に詰めろをかけて勝ちだ。
この局面で先手の最善手は何だろうか。
手元のソフト(GPS、Bonanza、激指)の意見は一致していて、(1)▲5二桂成。
以下は△同金▲同龍△4二金で詰めろが攻めが続かず、やはり後手よしだ。
実戦で成田さんがはなった勝負手は(2)▲4一金(36図)だった。

この手を中3のアマチュアの女の子が指した、というところが感動的である。
どれだけの人がこの▲4一金に対して、終盤の秒読みの中で正確に対応できるだろうか。
実力者の中井天河も(A)△4一同玉と誤った。
そのために、▲5二桂成で速度が逆転。成田アマが逆転勝ちした。
じゃあどうすればいいんですか!?
ソフトの意見は3者ともに一致。
(B)△5一金(37図)だそうだ。

これもまた感動的な手である。
▲5一同金ならば一手の余裕ができて後手勝ち。
▲5一同龍は△4一金として、▲6二龍ならば△3三玉、▲4二金△同金▲5二歩成ならば△3一銀で、後手がしのいでいる。
ということは、▲4二金とするよりない。後手は△同金と応じる一手と、ソフトの見解はまた一致。
そこでまた▲4一金と打てば・・・。
それは千日手である。
じゃあソフトは千日手が必然と読んでいるのか、といえばそうではない。
▲4一金は次善手以下で、最善は▲5二桂成だけれど、それで後手がやれる、という主張を変えないのだ。
いや、そうは言っても、現実には▲4一金に△5一金と応じてくれれば、先手は千日手で逃げられる権利を得る。
うーん。
千日手がらみになると、ソフトの判断が微妙になるという一例だろうか。

では▲4一金に対して、後手は△5一金が最善と結論を出していいのだろうか。
そうではない。
局後の検討で人間が導いた結論は、(C)△2二玉(38図)の早逃げで後手勝ちである。
▲4二金ならば一手の余裕を得ることができるので、△4八成香と先手玉に詰めろをかけて勝ちだ。
△2二玉と進めた局面でソフトに形勢判断をさせると、後手よしの方向で評価値が跳ね上がる。
△2二玉はソフトが読みにくい類の筋なのだろうか。

※追記。GPSfishは最初に△5一金で千日手と読んだ後、しばらくして△2二玉の正解を導いていた。