冬のドライブ
五稜郭からは横着をして、空港までタクシーに乗った。たまたま乗り合わせたのが地元名物のモーモータクシー。車の中で来週締切の原稿のことでも考えようと思っていたのだが、小ネタをちりばめた運転手のおじさんのマシンガントークに、一瞬たりとも気を抜く暇がなかった。
「函館市の人口は29万何千人、30万を切りました。そのうち男性が十何万、女性が十何万、つまり女性の方が多いのです。男性が1週間も函館にいればモテモテです。海外から来て函館に滞在している方は711人、先週から3人増えました。今通った函館市民会館、12月28日にGLAYのコンサートがありました、ほら、GLAYゆかりの場所をめぐる地図もあるんですよ」
地元出身GLAYのメンバーが通ったという高校の近くを過ぎたあたりからGLAYの話一色になり、GLAYの曲がかかる。ここが福生でナイアガラの話だったり、高崎でBOOWYの話だったら少しはついていけるのだが、GLAYとかは自分、本当に知らないんですよ。若手棋士の某君が十代の女の子の気をひくためにカラオケに通ってオレンジレンジの練習をしていたという話を聞いて、なるほど、若いうちはいろいろやらないとね、とひとごとのように思っていたのだが、そう言って逃げ切れない課題を突きつけられたような気がした。
「降り積もる雪よりあなたがなんとか(忘れた)。私このフレーズが大好きなんです。そんなこと言って女性をくどいてみたいものですね。今度函館にいらっしゃる時は彼女か奥さんを連れてきてください」
空港で降りる際、モーモータクシーのおじさんはそんなことを言った。十数年前に一緒に函館に来た某さんは、今どこで何をしているのだろう、と思った。

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